身体障害者相談員研修会実施報告
令和7年度災害時要援護者支援研修会・兵庫県身体障害者相談員研修会
実施報告
- 日時 令和7年度9月18日(木) 13:00~15:30
- 場所 兵庫県福祉センター 多目的ホール
- 主催 公益財団法人 兵庫県身体障害者福祉協会
- 参加者 189名(うち講師2名、手話通訳3名、要約筆記4名、職員6名)
- 概要
令和7年9月18日(木)兵庫県福祉センターにおいて、第一部「災害時要援護者支援研修会」、第二部「身体障害者相談員研修会」を開催しました。
年に一度、県内の身体障害者相談員の方々が一堂に集う研修会であり、今年はオンライン配信も取り入れたことで、県内38市町から計189名と多くの身体障害者相談員と介助者、市職員等にご参加いただきました。
一部、二部ともに熱心に受講される身体障害者相談員の皆様の姿が見られ、相談員として必要な知識を習得し、今後の活動への意欲を高めることができる研修会となりました。
- 災害時要援護者支援研修会】
講師:ひょうご防災特別推進員 東滝 弘子 氏
演題:阪神淡路大震災から30年 正しく恐れ 正しく備える~いのちをつなぐ一歩 AEDの基本~
〈講演の概要〉
阪神・淡路大震災から30年を迎えました。
私自身、阪神・淡路大震災では宝塚市で、東日本大震災では茨城県水戸市で被災しました。
二度の大災害を経験する中で痛感したのは、「備えているつもりでも、正しく備えなければ役に立たない」ということです。
阪神・淡路大震災では備えがまったくなく何もできず、東日本大震災では「備えていたつもり」でしたが実際には不十分でした。
この反省から防災士の資格を取得し、「備えはしているつもりでは意味がなく、正しく備えることが大切だ」という思いを胸に、防災の重要性を伝える活動を続けています。
この30年で社会は大きく変化しました。人口減少や高齢化、空き家の増加、消防団員の減少など、地域の防災力は低下する一方で、携帯電話の普及率は約10%から100%に、地震保険の加入率も約30%から70%に上昇しました。
行政に頼るだけでは限界があり、「自助・共助」の力が求められています。
地震には種類があり、阪神・淡路大震災は直下型、東日本大震災は海溝型で、揺れ方や被害の出方が異なります。
南海トラフ地震は複数の大地震が連続して発生する可能性があり、終わらない余震により先が見通せず、パニックになります。過去の経験に頼るのではなく、地震のタイプに応じた備えが必要です。
避難生活では、ライフラインの停止により、水・電気・トイレの問題が深刻化します。
災害関連死の多くは、避難後の体調悪化によるものです。衛生管理が重要であり、非常持ち出し袋には口腔ケア用品や簡易トイレを入れておくことをおすすめします。
災害時にはスマートフォンが使えない可能性もあるため、公衆電話やアナログの連絡帳の準備が有効です。災害伝言ダイヤル(171)も活用しましょう。
AED(自動体外式除細動器)は、音声ガイダンスに従えば誰でも使えるよう設計されています。
電極パッドの貼り方、濡れた体や毛深い部位への対応、心室細動の理解など、実践的な知識が必要です。AED使用時は、周囲の人を巻き込み、協力体制を築くことが命を救う鍵となります。
最後に、災害は想定を超えて発生します。「自分の命は自分で守る」という自助の意識をもち、地域での共助を育てることが不可欠です。
備えは一度に完璧にする必要はなく、小さな一歩から始めることが大切です。
「正しく恐れて、正しく備える」――これが、私たちの命を守り、地域を守る力につながります。
【第二部 兵庫県身体障害者相談員研修会】
講師:社会福祉法人 兵庫県視覚障害者福祉協会 総務・生活支援班長 小林 由夏 氏
演題:合理的配慮と見えない・見えにくい人への相談支援
〈講演の概要〉
兵庫県福祉センター2階に事務所を構える兵庫県視覚障害者福祉協会では、視覚障害のある方への支援や啓発活動を行っています。
今回は、合理的配慮の意義と、視覚障害者への相談支援の現状についてご紹介します。
1.協会の活動概要
兵庫県立点字図書館の運営をはじめ、自治体広報誌の点訳・音声版の作成、視覚障害者の外出支援(同行援護)、視覚リハビリテーションに関する相談や訓練の提供などを行っています。
また、県下各地の会員による地域活動や日常生活支援にも取り組んでいます。
2.合理的配慮について
「合理的配慮」という言葉は、2013年に制定された「障害者差別解消法」に基づく考え方です。
この法律は、障害を理由とする不当な差別を禁止し、障害のある人からの要望があった場合に、過重な負担とならない範囲で配慮を提供することを定めています。
さらに、2024年の改正により、事業者も含めて合理的配慮の提供が義務化されました。
これは、障害のある方が社会参加を妨げる障壁(バリア)を取り除いてほしいと意思表示した場合、行政機関や事業者が対応すべきことを意味します。
3.視覚障害の現状
令和5年度末時点で、視覚障害による身体障害者手帳を所持している方は全国で約32万人、兵庫県では5,026人です。
しかし実際にはその数倍の方が手帳を持たずに「見えにくさ」を抱えていると推計されています。特に高齢者が7割以上を占め、視力低下だけでなく、視野の狭窄や中心視野の欠損など多様な症状があります。
点字を使える方は一部であり、最近ではタブレットを活用して文字を拡大表示したり、白黒反転して読みやすくするなど、デジタル機器を利用する人が増えています。
情報の入手が難しいことは、視覚障害者にとって大きな困難の一つです。
4.相談支援の事例
当協会には、生活や就労に関する不安や孤独感など、幅広い相談が寄せられます。
・趣味の読書を失って気力を無くした方が、奥様の粘り強い支えで音声図書を利用するようになり、再び楽しみを見出した例
・子育て中の女性が視力を失い、相談されていく中で前向きに工夫しながら生活を立て直す例
・働き盛りの男性が失明の宣告を受け、責任感から部下や家族にも相談できずに悩みを抱え込む例
また、家族という気やすい間柄だからこそ、「あれを取って」といった当事者には通じない言い方をしてしまい、双方に苛立ちやすれ違いが生じることもあります。
そのため、当事者と家族双方にとってより丁寧なコミュニケーションと理解が重要です。
合理的配慮は、障害のある方が直面するバリアを取り除き、平等に社会参加できるようにする仕組みです。一人ひとりの見え方や生活に応じた柔軟な支援が求められています。
当協会は、今後も視覚障害者やその家族の声に耳を傾け、地域や行政、事業者と連携しながら相談支援を進めてまいります。
もし視覚障害の方の相談を受ける機会があれば、ぜひ地域の当事者や、私たち兵庫県視覚障害者福祉協会にご相談ください。
皆さんのご理解とご協力を、心よりお願い申し上げます。


